当社の理念

当社の理念

 マヤ遺跡と技術革新への道

 

マヤ暦365.2420日、ゼロの絵文字と20進法を使用していたマヤ文明は、ある時期、ユカタン半島の密林に都市国家を形成し、繁栄していた。

私は、今から30年程前、メキシコ市に滞在して、バレンケ、コパン、チチェン・イツア、ウシュマル、ティカル、トゥルムなどのマヤ遺跡を歩いていた。

深い緑に囲まれた壁構造の宮殿に腰掛けていると、草木虫魚と小鳥達の合奏が聴こえてくるのみであった。

滅亡した原因は色々と学説があるが、私は飲料水および食糧不足、自然分解処理に頼らざるをえない汚水の処理能力不足、自然浄化能力を超えた自己増殖による自己崩壊と考えている。

1970年、アメリカのKenics社が世界で初めて静止型流体混合器(Motionless Mixer)の商品化(商品名:Static Mixer)に成功した。流体は2のn乗で分割・回転・合流・反転を管内で連続的に繰り返し、混合・攪拌される。

当社の静止型流体混合器(商品名:ミューミキサー)は、分割数を6のn乗以上にし、さらに螺旋状の羽根を多孔体で形成して、高効率の混合とメンテナンスフリー化を達成している。

現在、当社はミューミキサーを利用した環境機器を製品化している。湿式排ガス処理装置「ミュースクラバー」は、熊野那智大社で「那智の大瀧」と崇められている「お瀧」を観想して製品化した装置である。

白い滝の流れにミューミキサーを置いてみるとどうなるのか。岩肌に沿って流れる本流は位置エネルギーを運動エネルギーに変換して、大気を取り込み微細化されながら重力に逆らわずに、垂直に落下している。流れの弱い周縁部は苔や草木が共存している。

ミュースクラバーは、滝のように、気体と液体は上から下へ並流で流れる。フラッディング、チャネリングの発生はなく、粉塵、結晶による閉塞もなく、メンテナンスフリーで長期間の連続運転を可能にしている。単独でガス冷却・ガス吸収・除塵機能を有する処理装置である。

海外線に独り立つと、白い砂浜、白い岩肌、紺碧の海に巻き込まれる白い波、荒れ狂う怒涛、砂浜の白いキャンバスに繰り返し繰り返し波紋を描く幻想画家。

波動エネルギーにより、大気中の酸素、炭酸ガスは海水中に吸収され、海水中の揮発性物質は放散されている。気液接触による気体から液体、液体から気体への物質移動操作である。岩の上に、砂浜に、ミューミキサーを置いてみると、気液接触はどうなるのか。

これは放散・曝気処理装置「ミューリアクター」、「ミューエアレータ」の原理となる。

教会の尖塔と対峙して、屹立し、白い噴流を重力に抗して噴射している噴水。

生成した水滴はどこまで上昇可能かは、水滴の速度と水滴径に関係し、上昇する速度と沈降する速度が等速になる終末速度により決定される。その水滴径はNewtonの法則で予測できる。

このNewtonの法則を基礎にして、噴水にミューミキサーを置いてみると、微細なミストと粉塵は噴水と混合されて、増粒し、増湿し、ミストと粉塵は捕集される。新しい気・液分離装置「ミューセパレータ」の誕生となる。

技術革新は、観察・懐疑・熟成・直観・啓示・感謝・継続を、必要条件と考えている。

技術者として、マヤ遺跡に思いを馳せながら、2重螺旋状のデオキシリボ核酸(DNA)で形成されたミトコンドリアによる生命の進化(動的平衡)のごとく、現代のIT(情報技術)文明の周縁に立って、高密度にブラックボックス化した集積回路が遺跡にならないように、「志存高遠」、「大象無形」の精神で、蒸留、バラスト水処理、CO2吸収などへの技術革新に邁進する覚悟である。

遺跡は、天と地の間に独り立つ人々に多くのことを静かに語りかけてくる。時の在りかは時の宝石箱となり、「野の道」(M・ハイデッガー)をゆっくりと歩み守る人々に四季を通じて語りかけてくる。詩的にこの大地に住まうことを。単純なるものは人目を惹かぬ、無門を、周縁を好む。

遺跡に頭を垂れて流れる一滴の雫 豊饒なる深く澄んだ美の海原に 化石を穿ち 道を求めて 不二なる宇宙へ。

「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」

ー 芭蕉 ー

※本文は「化学装置」2008年7月号「巻頭言」に掲載された記事を一部追記致しました。